ローカル線廃線・再編の改定法が成立国交大臣による再構築協議会設置を法制化

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国鉄闘争全国運動会報156号掲載記事(2023年5月16日発行)

2月10日に岸田政権が閣議決定した「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案(改正地域公共交通活性化再生法)」が4月21日の参議院本会議で可決、成立した。

国土交通省は「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」「アフターコロナに向けた地域交通のリ・デザイン有識者検討会」の2検討会を設置し、それぞれ昨年7、8月に提言書を公表し、検討会の提言を受ける形で法案を準備した。

法案には、自治体や鉄道事業者からの要請があれば、地方鉄道の存続や利用促進策、バスへの転換などを議論する「再構築協議会」を国土交通大臣が設置できることが盛り込まれた。

また、路線バス事業者などと自治体が協定を結び、特定のエリアを一括で運行する事業も創設され、こうした事業に対して国が「支援」を行う。

このほか、鉄道会社が地元の自治体や住民などの合意を得られれば、国の認可がなくても届出だけで運賃設定ができる「協議運賃制度」が創設され、柔軟に運賃設定できるようになる。

再構築協議会

同法は07年にできた法律で従前から自治体主導の協議会制度は制度化されていたが、国の関与は助言にとどまる。

新設された「再構築協議会制度」は、鉄道ローカル線について、自治体または鉄道事業者からの要請に基づいて、国土交通大臣が「再構築協議会」を設置する。国は、協議会の開催、調査・実証事業などに対して支援するとしている。検討会議提言は「目安は3年以内」とした。

ようするにJR各社が「ローカル線(の廃止)について協議をしたい」と申し出れば、国が協議会を整え、3年以内に決着を迫る仕組みだ。

検討会や法改定の動きに合わせて(先行させて)、JR西日本が昨年4月、JR東日本が昨年7月に1㌔当たりの1日平均乗客数を示す「輸送密度」2千人未満の線区を公表し、国鉄分割・民営化以来の大規模な存廃問題が全国で浮上している。

改正法施行は今秋の見通しだが、JR各社は任意の形でも再編協議を急ぐ構えで、JR東日本は4月、久留里線(千葉県)の一部区間について千葉県と君津市に協議を申し入れた。

宮城県では陸羽東線、石巻線、気仙沼線の3路線を対象に「ローカル線活性化検討会議」が3月27日に発足した。福島県では常磐東線活性化対策協議会が3月29日に初会合を行った。青森県では昨年8月の大雨で被災し不通が続く津軽線のあり方検討会議が1月に初協議を行った。大湊線をめぐっては昨年12月に協議会が設置された。

自治体側には「JRとの協議に入ると廃止に追い込まれる」との警戒感が強いが、改正法は、協議内容やそれに基づく実証実験なども法定化、国が費用を助成してローカル線に沿ってバスを走らせる実証事業などを行い、関係者間で「鉄道の維持」か「バスなどへの転換」を決めることが定められた。自治体と鉄道事業者は「正当な理由がある場合を除き、応じなければならない」とされ、自治体が協議会の席を拒否することは難しい。

再構築協議会の対象路線は、輸送密度が千人未満が目安とされる(検討会提言)。19年度で千人未満は百線区程度。また対象となるローカル線は「二以上の都道府県の区域にわたるもの又は一の都道府県の区域内にのみ存する路線で他の路線と接続して二以上の都道府県の区域にわたる鉄道網を形成するもの」とされた。これは、複数の広域自治体(都道府県)にまたがっているため協議が進みにくい路線をを想定している。

自治体が地域公共交通計画に鉄道存続を位置づけると、鉄道事業の再生に向けて補助金が出る枠組みとなっている。バス転換となれば、JRが鉄道廃止後もバス路線の運行に責任を持つとされている。

協議運賃

「協議運賃」に関しては、地域関係者間の協議で国土交通大臣への届出による運賃設定を可能とする。すでにバスでは導入済みの仕組みだが、鉄道やタクシーにも適用する。運賃値上げが容易になるため、JRのローカル線に広く設定される可能性が指摘されている。

「エリア一括協定運行事業」は、自治体と交通事業者が、一定の区域・期間について、運行回数や路線網など、交通サービス水準や、費用負担などについて協定を締結するもの。協定に基づいて国は複数年にわたり補助金を交付するとする。

これは、これまでの路線ごとの補助金交付方式を転換するもので、ローカル路線バスの運行系統が大きく変化する可能性が指摘されている。

芸備線が焦点化

「国も早くモデル地域が欲しいはず。どこまで協議を制御できるのか」と対象路線の地元は警戒感を強める。再構築協議会の第1号案件は、JR芸備線(岡山県~広島県)とも言われ、全国から注目されている。

国交省のデータでは2000年以降に廃止された路線は45路線あり、14年以降は、JR北海道が5路線、JR東日本が3路線、JR西日本が1路線で、近年、JRの廃線が激増している。

しかも営業距離が長い路線の廃線が多いのが特徴で、21年4月に廃線になったJR北海道の日高線は116㌔、18年4月に廃線になったJR西日本の三江線は約108㌔。

JR東日本によると、21年度における赤字路線は66路線。JR東日本の管轄内で赤字額が大きい路線は東北地方に多い。

1987年の国鉄分割・民営化の際に、〝国鉄改革を前提に不採算路線を含む鉄道網の維持は可能〟として、東日本・東海・西日本・九州の上場4社については「新会社がその事業を営むに際して当分の間配慮すべき時効に関する指針(大臣指針)」に基づき、廃線については抑制されてきた。

しかし、「対処療法ではなく体質改善を進め、高齢化等に伴う地域課題を解決する」と主張し、従前の建前を完全に投げ捨てて、大転換的に廃線化の動きを加速させているのが現状だ。

「国鉄闘争全国運動」さんからの投稿です。

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