地域と環境を破壊するリニア新幹線建設

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ローカル線廃止に進む国交省とJR

地方鉄道の廃線に向けた国土交通省検討会の提言が7月に出され、これを受けてJR東日本は輸送密度2000人未満の路線の収支を公表した。国土交通省とJRは、ローカル線の大規模な切り捨てへと急速に動いている。8月末には、JR北海道の留萌線廃止を地元自体がのまされた。

JRは、都市部で上げた利益をローカル線に回す「内部補助」はもう成り立たなくなったと言い、政府は鉄道を維持するための財政投入を拒んでいる。公共交通として鉄道が必要なら、自治体が財源も含めて責任を持て、と言うのだ。自治体にそんな財政的余裕があるはずもなく、結局それは、鉄道の廃止を地方に強制するものになる。

これは戦時に向けた国家改造の一環だ。岸田政権は防衛費倍増を唱え、大軍拡を進めている。防衛省は来年と予算の概算要求として、5兆6千億円に加えて金額が明示されない「事項要求」を100近くも出した。これを含めれば防衛省の要求額は6・5兆円規模になるという。岸田政権は防衛費を今後は11兆円程度にまで増やす方針だ。財政破綻国の日本が大軍拡に突進すれば、医療も社会保障も福祉も教育もすべて切り捨てられる。公共交通の解体は、その手始めに強行されようとしている。

岸田政権が6月に策定した骨太方針は、「国防予算をGDP比2%以上にする」「5年以内に防衛力を抜本的に強化する」と打ち出した。骨太方針にはまた、「地域公共交通ネットワークの再構築」に向け、「国が中心となって交通事業者と自治体との協議の場を設ける」ための法整備を行うと書かれている。国土交通省検討会の提言は、これに基づき出されたものだ。骨太方針はそれに加えて、リニア中央新幹線の早期整備を掲げた。

骨太方針をさらに具体化した「デジタル田園都市国家構想基本方針」では、リニアつについては「全線開通の前倒し」とまで書かれている。

絶対に採算が取れないリニア中央新幹線

「ローカル線の大虐殺」と言われる事態が進む一方、リニア中央新幹線には膨大な費用が投じられている。2016年、当時の安倍政権はリニアに3兆円もの財政投融資資金を投入すると決めた。

他方、JRが廃止を狙う輸送密度2000人未満の線区の赤字は、JR東日本が693億円、JR西日本が248億円、JR四国が225億円、JR九州が51億円だ。JR北海道は輸送密度2000人以上を含む全線区の赤字を公表していて、その額は790億円になる。それぞれ対象とする年度も違うので、以下は厳密な計算ではないが、JR各社が公表している年間の赤字額の総計約2007億円なので、リニアに投じられた3兆円をローカル線に充てれば、線路は15年間は維持できる計算だ。

だが、政府やJRは絶対にそうした選択はしない。リニアは日本にとって国家的威信をかけた事業だからだ。2014年に国土交通省が策定した「国土のグランドデザイン2050」は、リニアによって東京‐大阪間が1時間以内に結ばれれば、東京、名古屋、大阪の三大都市圏が一つの都市として機能する「スーパー・メガリージョン」が形成されると述べている。これ自体は非現実的な妄想だ。だが、帝国主義各国から遅れを取る日本は、ここに再興の夢を託したのだ。

そのリニアこそが、JR体制を崩壊させる最後の引き金を引こうとしている。リニアは絶対に採算が取れない。リニアが完成したとしても、その乗客数だけ東海道新幹線の利用者は減る。JR東海の収入増は1円もない。

これはコロナの前から分かっていたことだ。まして、コロナで激減した乗客が将来、100%回復することはあり得ない。むしろその現実に突き動かされて、JR各社はローカル線の大虐殺に走っている。確かにJR東海は、他社JRに比べればローカル線の数も少なく総延長も短い。だからJR東海は、東海道新幹線の収益でリニアを建設する(まさに「内部補助」だ)プランを立てることができたのだ。だがリニアは、どのローカル線にも増して最悪の赤字要因になるしかない。安倍の盟友で改憲を悲願とし、何よりも国鉄労働者1047名解雇の直接の下手人だった葛西敬之が残した負の遺産が、リニア中央新幹線だ。

完成に疑問符が付くリニア工事

リニアは、およそ最先端技術などではない。それなりに重たい荷物をそれなりに離れた場所まで運搬するとしよう。荷物を手で抱え上げて運ぶより、手押し車に荷物を載せて押していくほうがはるかに楽だろう。レールの上に車輪を転がせる従来の鉄道システムを手押し車とすれば、浮上して走行するリニアは「よっこらしょ」と手で荷物を抱え上げることに相当する。よく知られているように、リニアを運行するために必要な電力は原発1基分と言われる。その膨大なエネルギー消費は、荷物を手で抱え上げる場合の労力の大きさに対応する。人類は紀元前何世紀もの太古から手押し車を利用してきたが、リニアは人類をそれ以前の状態に引き戻すに等しいシステムだ。実際、「8の字コイル」で車体を浮上させるリニアの原理は、「超電導」という言葉がかもし出すイメージとは裏腹に、ひどく前時代的だ。こんなものに「国家の威信」をかけること自体、絶望的と言うほかにない。

加えてリニアは、その完成にさえ疑問符が付く状態だ。JR東海は当初、2027年に品川―名古屋間を開業すると計画していた。これはもはや達成不可能だ。リニアのトンネル工事によって大井川の水が減少することを懸念する静岡県が工事を認めていないため、同県内での建設工事は止まっている。これはマスコミでたびたび報道され、よく知られている事実だ。だが、工事が遅れている理由はそれだけではない。

沿線各地で、トンネル掘削によって生じた残土の処理方法は未定のままだ。その状態でJR東海はトンネル工事を強行した。計画性などまるでなく、環境破壊をほしいままにするJR東海の傲慢なやり方を見せつけられて、各地のリニア反対運動はあきらめを超えて粘り強く展開されている。

地域と環境を次々と破壊

リニアが地域をどれだけ破壊しているかを見ておこう。

処理方法が決まらないトンネル残土

静岡県内で残土置き場に予定されている大井川上流の燕沢(つばくろさわ)は、崩落の危険がある場所だ。そもそも大井川上流に安定した地盤は期待できない。JRはそこに、360万立方㍍の残土を7階建てのビルほどの高さに積み上げようとしている。静岡県熱海市では2021年7月の豪雨で土石流災害が起きた。その記憶も生々しい静岡県民が、JRのずさんな残土処理に怒りを持つのは当然のことだ。

長野県内では、県内のリニア工事で出る残土のうち処分方法が決まったのは3割にとどまる。残土置き場の予定地も、崩落の危険が指摘されているところが多い。

下伊那郡大鹿(おおしか)村の小渋(こしぶ)川左岸の鳶ケ巣沢(とびがすさわ)では、かつての大崩落によって生じた地形の下部に、残土置き場が設けられる。ここでは20万立方㍍の土を高さ35㍍に積み上げる計画だ。驚くべきことにJRは、「震度7相当の地震が発生しても崩れない」「仮に崩壊しても洪水などで必要な河道の面積は確保され、小渋川への影響は小さい」と言い張っている。だが、そんな保証はどこにあるのか。

長野県下伊那郡豊丘(とよおか)村の本山(ほんやま)地区は、過去に土石流災害が起きた場所だが、そこに130万立方㍍の残土が積み上げられることになっている。

残土置き場に予定されている飯田市瀧江(たきえ)の清水川は、長野県の作成したハザードマップで土石流危険渓流に指定されていることが判明した。

同じく長野県下伊那郡阿智(あち)村の清内路(せいないじ)地区・黒川支流のクララ沢も、土石流危険渓流だ。JR東海はそこに約20万立方㍍の残土を最大23㍍の高さに積み上げるという。残土置き場の面積は2・5ヘクタールにもなる。住民から強い懸念の声が上がっているが、JR東海は「盛り土内に水がたまらないよう地表や地下に排水設備を設置するから熱海市の土石流災害のようなことは起こらない」と強弁する。だが、同地を視察した地質学者は、「周辺斜面に崩壊地形が多く見られるなど安定した沢ではない」と指摘した。

長野県下伊那郡下條村睦沢(むつざわ)地区の火沢(ひさわ)にも残土が置かれるが、ここも土石流危険渓流だ。

長野県内全体でみると、上伊那・下伊那・木曽の各地域に、決定済みの残土置き場が14カ所、残土置き場として候補に挙げられた場所が20カ所ある。そのうち、決定済みの場所の6カ所、候補地の13カ所が、長野県の作成したハザードマップで、土石流危険渓流や急傾斜地崩壊危険区域、地滑り危険箇所に指定されている。

長野県伊那地方は1961年(「昭和36年」)6月に起きた土石流を、「三六災害」という名で伝承し教訓としてきた地域だ。その被災地の直近に、JRは平然と残土を積み上げようとしているのだ。

同県木曽郡南木曽(なぎそ)町でも、約180万立方㍍と見込まれる残土の置き場が決まっていない。この地域でも土石流災害が繰り返し起きている。それへの住民の危機感が、残土置き場の選定を阻んでいる。

中でも問題がある「要対策土」

残土の中には有害物質を含むものもある。ヒ素やフッ素、重金属類などを基準値以上に含む残土は、「要対策土」と呼ばれる。これらの物質は自然に由来するが、掘り出されれば直ちに危険物と化す。あきれたことにJR東海は、これら要対策土の処理方法も未定のまま、トンネル掘削工事を強行した。対処の仕様がなくなったJRは、昨年12月、要対策土の「活用先」のあっせんを長野県飯田・下伊那地方の自治体に求めた。これに応じる自治体はなく、今年8月にJR東海は再度、自治体にあっせんを要請した。工事ですでに排出された要対策土は、工事現場付近に仮置きされている状態だ。

岐阜県瑞浪(みずなみ)市には、日本最大といわれるウラン鉱床がある。そこを通過する日吉トンネルの工事では、実際にウランを含む残土が出ている。それを安全に管理することができるのか。

岐阜県可児(かに)市の残土処分場では、基準値以上の水銀が検出された。

岐阜県御嵩(みたけ)町では、町内のトンネル工事で出た要対策土の受け入れを町長が表明した。当初は反対していた町長の態度豹変に、住民は猛反対している。リニアは地域を引き裂くのだ。

山村がダンプ街道化

トンネル残土が発生すれば、それを残土置き場まで運搬する大量のダンプカーが地域を通行することになる。リニア工事が始まって、のどかな山村は一転して騒音と振動のるつぼにたたき込まれた。「日本一美しい村」連合に加わり、観光客や都市部からの移住者をひきつけてきた長野県下伊那郡大鹿村や木曽郡南木曽町は、リニアのルートにされたことで静謐な環境や景観を損なわれた。

大鹿村役場前の国道152号線のダンプカーの通行量は、今年3月には1日平均往復400台だったが、4~6月には往復820台に増えた。大鹿村から伊那市へと残土を運ぶダンプカーは、途中、下伊那郡松川町を通過するが、JR東海は今年7月、交通量を1日平均片道80台から120台に増やすと住民説明会で公表した。

ダンプカーによる交通事故も起きている。昨年8月、大鹿村大河原(おおがわら)の県道松川インター大鹿線桶谷(おけや)トンネルで、ダンプカーが自転車を追い越そうとして接触した。昨年10月には、同村大河原の南アルプストンネル長野工区の除山(のぞきやま)非常口付近の残土仮置き場で、ダンプカーが電柱に衝突、復旧工事のため釜沢(かまっさわ)集落の9世帯が一時停電した。また昨年12月、上伊那郡中川村葛島(かつらしま)の県道でダンプカーが擦れ違いで後退した際、道路脇の側溝へ脱輪、地元地区が管理していた鳥獣被害防止用の柵の一部を壊した。

このように、工事が進めば進むほど、地域破壊は深刻になる。

トンネル工事による水枯れも

懸念されていた通り、トンネル工事による井戸枯れも起きた。長野県下伊那郡豊丘村では、伊那山地トンネルの工事で3件以上の横井戸(斜面などに水平方向に掘られた井戸)の水が出なくなった。

生コンの垂れ流し

今年4月、長野県上伊那郡中川村・半の沢のリニア工事用道路の建設現場で、大手ゼネコン鹿島が生コン交じりの車両の洗い水をそのまま流していたことが発覚した。地元住民団体は6月にこれを法違反として告発し、7月にJR東海はその事実を認めた。

全日建運輸連帯労組関西生コン支部のような労働組合がこの地域に存在していれば、ゼネコンのコンプライアンス違反を追及する強力な運動が展開されていただろう。ゼネコンは過疎地域なら何をやっても構わないとばかりに、違法行為を繰り返していたのだ。

相次ぐ労働災害

トンネル工事では重大な労働災害が繰り返し起きている。

昨年10月27日、岐阜県中津川(なかつがわ)市の瀬戸トンネルの工事現場で崩落事故が起き、1人が死亡し1人が重傷を負った。死者が出ているにもかかわらず、JR東海は今年5月に同トンネルの工事を再開した。

昨年11月8日には、長野県下伊那郡豊丘村の伊那山地トンネル・坂島工区で崩落が起き、1次下請けの労働者1人が軽傷を負った。

さらに今年3月1日、愛知県春日井市の第一中京圏トンネル・西尾(さいお)工区で、吹き付けたコンクリート片がはがれ落ち、労働者が右肋骨骨折と右肺挫傷の重傷を負った。

この事故を受けて、長野県は県内全5工区での工事の一時停止を求め、工事は止まった。そして、JR東海が安全管理対策を確認したとして工事を再開した当日の3月8日、再び労災事故が起きた。豊丘村の伊那山地トンネル・坂島工区で、コンクリート吹き付け機の配管に生じた目詰まりを解消するため圧縮空気を送った際、配管の接続部分が外れ、飛び出したコンクリートが1人の顔に、外れた配管が別の1人の腹部に当たった。共に軽傷で済んだものの、安全管理などまるでできていなかったのだ。にもかかわらずJR東海は、長野県でも愛知県でも工事を再開した。

その結果、やはり事故が起きた。4月15日、伊那山地トンネルの坂島工区で、労働者が鉄板と工具に指2本を挟まれ骨折した。同工区では6月に工事が再開されている。

そして再び事故が起きた。9月8日、豊丘村にある伊那山地トンネルの戸中(とちゅう)・壬生沢(みぶさわ)工区で、後退してきたバックホーに労働者が左脚をひかれて骨折した。

この事故についてJR東海は、マスコミの取材に応じない態度をとったという。県や沿線自治体には、労災事故についても情報を公開するとJR東海は約束していたはずだ。JR東海の秘密・隠蔽体質はますます深まっている。

大都市部でも工事はストップ

シールドマシンは動かず

リニア工事はJR東海の思惑通りには進んでいない。東京での大深度地下のトンネル掘削工事も止まったままだ。

昨年10月、品川区の北品川非常口からトンネルを掘削するシールドマシンが発進した。だが、今年2月にシールドマシンは作動しにくくなり、3月になってストップした。約50㍍掘削しただけで、工事は止まった。この区間の工事は、計画より半年遅れる見通しだ。

東京都品川区の北品川非常口の工事現場。ここから発進したシールドマシンは50メートル先で止まった

シールドマシンが止まった理由を、JR東海は「土壌を柔軟化する添加剤の量を作業者が間違えたから」と説明する。他方、2020年10月に東京都調布市の住宅街で起きた外郭環状線の工事による大規模な崩落は、次のような原因で起きた。この現場では、上から土砂が沈み込んできて、シールドマシンのカッターが土で詰まるトラブルが発生した。その土砂を取り除くため、土を軟らかくする薬剤を注入する「特別な作業」を繰り返した結果、地盤が緩み、シールドマシンはトンネル上部の土砂を過剰に取り込むことになり、地表の崩落に至った。これは、建設主体である東日本高速道路の報告書に書かれていることだ。

ならば、地表からの深さが40㍍以上ある大深度地下でのトンネル掘削工事については、次のように言えるのではないだろうか。大深度地下では、40㍍分の土壌の圧力でシールドマシンは動きにくくなる。円滑に動かすためには薬剤で土壌を柔軟化しなければならないが、そうした措置を施せば、地表は崩落してしまう。

JR東海と国は、大深度地下での工事は地表に何の影響も及ぼさないとして、地権者への補償もなしに工事を進めてきた。それを可能にする法律さえ作った。だが、地表に影響がないというのは、大うそだった。外郭環状線の工事をめぐっては、今年2月、東京地裁が国や東日本高速道路、中日本高速道路に一部区間の工事中止を命じる決定を出している。大深度地下でのリニア工事も、直ちに中止すべきだ。

シールドマシンが止まっているのは東京都品川区内だけではない。愛知県春日井(かすがい)市でも、掘削開始地点のコンクリート壁を掘り始めところシールドマシンの刃の一部が欠け、作業は止まった。ここでも工事の遅れは半年と見込まれている。

都市部でこの状態なのだから、山岳トンネルの掘削工事はさらに深刻な事態をもたらす可能性がある。南アルプストンネルは地表面からの深さ(土被り)が最大1400㍍に達し、長さも25㌔と長大だ。深さ1400㍍分の土壌の圧力が加わる場所で、掘削機械はまともに作動するのだろうか。無理やり工事を強行すれば、大事故は避けられないのではないだろうか。まして南アルプストンネルは、中央構造線と糸魚川静岡構造線という日本屈指の大断層帯をぶち抜いて造られる。活発な造山運動が今も続き、複雑な地質で構成されるこの地域での工事が、机上の計画通りに進むとはとても思えない。

用地取得も進んでいない

さらに、最近になって興味深い事実が明らかになった。

静岡県の川勝川勝平太知事は9月7日に神奈川県のリニア工事現場を視察したが、その際、同県相模原市緑区の「関東車両基地」工事予定地の用地取得が進まず、着工もされていない事実を知ったという。同知事は、「仮に用地取得が今年中に完了し、2023年初めから工事を開始しても、工事完成は30年代前半あたりになるので、2027年品川―名古屋間の開業には到底間に合わない」と述べる。これに対して神奈川県の黒岩祐治知事は、「すでに約5割の地権者から用地を買収しているので、リニア建設の全体のスケジュールに影響を及ぼすことはないと」反論した。JR東海の金子慎社長も、取得した用地は半分程度だと認めている。

「5割の用地取得」で実際に27年開業に間に合うかどうかはともかくも、着目すべきは、5割しか用地を取得できていないのに工事を強行しているJR東海の傲慢さだ。この「関東車両基地」の予定地には、もともと神奈川県立相原高校があった。広大な農地や牧場、森林を有していた高校は、リニアのために移転させられた。リニアは教育も生活も環境も平然と破壊する。

だが、そこまでして着手したリニア工事は、完成の見通しも立っていない。それでもJR東海は、都市部でも山岳部でもめったやたらに地中に穴を開けている。ケインズ主義を揶揄してよく言われる言葉に、「穴を掘って穴を埋めるような公共事業でも、有効需要創出には効果がある」というのがある。これを比喩ではなく地で行っているのがリニア中央新幹線建設だ。

日本での新自由主義は国鉄分割・民営化から本格的に始まった。財政再建を振りかざし、ケインズ主義も否定して、新自由主義政策は三十数年にわたり繰り広げられた。その根本にあったのは労働組合の破壊だ。こうした凶悪な政策の行き着いた先が、「無駄な穴掘り」のリニアならば、資本主義はもう終わっていると言うほかにない。

リニア工事に伴い各地で起きている様々な事実については、信濃毎日新聞の連載「土の声を『国策民営』リニアの現場から」を参照にしました。地域に密着した優れたルポルタージュです。一読をお勧めします。

「長沢典久」さんからの投稿です

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