24年12月4日
久留里線と地域を守る会
代表 三浦 久吉
「JR久留里線(久留里・上総亀山間)新たな交通体系について」に対する抗議声明
11月27日、東日本旅客鉄道株式会社・千葉支社土澤壇社長は、10月21日に開催された第5回JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議が出した「報告書」に基づき、久留里・上総亀山間の新たな交通体系を発表しました。
「発表」は「検討の結果、当社はJR久留里線(久留里・上総亀山間)の鉄道は、バス等を中心としたあらたな交通体系へのモードチェンジを図ることが必要と考えております」と結論付けました。
それは、JR久留里線(9.6㎞)を廃線することであり、これまで5回行なわれてきた、「交通検討会議」をも無視するものです。
あまりにも唐突であり、一方的かつ一面的なものであり、はじめから久留里線を廃線にすると言う既定路線に沿ったものと言わざるを得ません。「交通検討会議報告書」をも無視する土澤支社長の「発表」は、絶対に許せません。
第1に、これまでJR千葉支社は、久留里線について、「廃線でもない、存続でもない」と一貫して言って来ました。何を根拠に突然廃線を決定したのか。交通検討会議「報告書」は、「バス転換」は、「上総地域の交通体系」の一つに過ぎません。かつ「それは困難も伴う」と言っています。その上で「最終的には、君津市地域公共交通会議において、地域のより良い公共交通のあり方を決定することになる」としていますが、「君津市地域公共交通会議」はまだ開かれてもいません。また君津市に対してどのように申し入れたかはわかりませんが、あまりにも拙速過ぎるのではないか。
第2に「報告書」を策定するにあっての材料・数値・根拠は、昨年11月~12月に行なわれた「移動実態調査」であるとするアンケートです。「報告書」では、調査に応じたのは、1110世帯、回収率49,5%と半数以上の人たちが回答しませんでした。理由は「利用したくても利用出来ない現状ではあらかじめ『利用が少ない』結果はわかっている」「そんなものには応じなかった」と少なからずの住民の方は答えています。
第3に、久留里線の赤字額についてです。JRが話し合いを申し出たとき(昨年3月)は赤字額―2億8千900万円、通過人員1日55人、「100円稼ぐのに1万9000円かかる」でしたが、今日では、赤字は2億3千500万円、「100円稼ぐのに1万3580円」と言う様に改善しているが、そのことについては全く触れていない。私たちは赤字額で鉄道の価値を判断することに絶対反対であるが、なぜ改善しているかを明らかにすることは久留里線をどうするか考える上で重要な材料である。にもかかわらず、なにか「廃線を急ぐ理由」があるのだろうか。
「報告書」は、上総地区の交通を、久留里線(久留里・上総亀山間)が赤字である、利用者が少ないことを理由にして、交通体系を考えるとしていますが、公共インフラとりわけ鉄道の収支は赤字が前提です。世界的にみても、営業収支を理由に鉄道の存廃を判断する国はありません。
第4に鉄道は、その地域の歴史とともにあり、地域の存続と発展にとってかけがいのないものです。
久留里線の敷設には、地元の資産を投じて行なわれました。久留里から上総亀山まで延伸して開業する(1936年)にあたっては、お寺の墓地を移動までして通しました。地域の力を得て今日の久留里線は存在しているのであり、郷土の財産です。このように地域の努力と犠牲を伴って築きあげてきた久留里線を、利用者が少ないと言うことだけで廃線にしてよいのか。
久留里線の歴史は、同時に苦難の時代を経ました。太平洋戦争末期、敗戦が濃厚とされるとき、久留里・亀山間は武器の調達のためレールは一度はがされました。しかし戦後、沿線地域の人たちの努力で見事に復活しました。
国鉄分割・民営化後の1987年以降「利用者が9分の1に減少した」ことをもって鉄道を廃止する理由にしていますが、JRはこの30年間いかなる経営努力をしてきたのでしょうか。ワンマン運転の導入、昼間5時間半さらに3時間計約8時間以上列車を削減し、保線などメンテナンスなどほとんど行なわれていません。駅は一部を除いて、すべて沿線の君津市、木更津市、袖ケ浦市が建てたものです。トイレの清掃などすべて地元のボランテイアが行なっています。他の鉄道会社が行なっているトロッコ列車の導入など見たことがありません。
第5に、「1日最大15人、休日最大20人が利用」と「報告書」は算出していますがその根拠を明らかにされたい。そんなに少ないはずはないとみな言っています。休日に上総亀山駅に下車した人数を数えたところ、100名を超えた例があります。
第6に、鉄道を廃止し新たな交通体系へのモード転換が必要としていますが、その実現性は同時に困難が伴うと言っています(「報告書」35ページ)。
*上総地域の望ましい交通体系を策定するにあたっては、鉄道・バス・タクシーと言った交通事業者を含め、地域の関係者で構成される君津市地域公共交通会議(法定協議会)において、時間ごと・エリアごとの最適な運行ルート、・交通手段の組み合わせ、・コストの負担を検討し、地域のより良い公共交通のあり方をもってすると言っています。
27日の土澤氏の主張は、こうした検討をする前に、久留里線を廃線にすると決めつけており、全くもってルール違反ではないのか。
「報告書」は「観光など地域振興などに寄与する観点が重要」「千葉県や君津市と協議すべきである」と結論づけています。
27日土澤氏はこうした自治体との協議はすでに行なわれたと言うのでしょうか。だとすると、それは「交通検討会議」が非公開・密室で行なわれたやり方と同じであると言わざるを得ません。
「JRが地域の方々と連携開始し、観光面での地域振興に積極的に努める」ことは、いつどこで行なわれたのでしょうか。このように土澤会見は全く一方的「検討会議の報告書」に全くそぐわない代物です。土澤支社長は、「モードチェンジ」してからそれを何年維持すると責任を持って言えるのでしょうか。様々な課題が多いし、展望は乏しいと言わざるを得ません。
第7に、地元住民の列車ダイヤをもとに戻して欲しいという要望・意見に応える新たな交通体系の移行により利便性の高い地域交通が実現します。今次総選挙の争点であった、石破首相も掲げる「地方創生」とローカル線の廃線は真逆の政策です。ローカル線の廃線は「地方消滅」に拍車をかけることになります。
第8に、「鉄道を廃止し、バス転換する」ことが果たして展望のある話でしょうか。全国のとりわけJR北海道の留萌本線は、まず増毛~留萌(2016年)、留萌~石狩沼田(2023年)と二段階的に廃止されました。最後に石狩沼田~深川間(2026年)が廃止される予定です。最初に廃止された、増毛・留萌間は留萌本線の先端部で、まずバス転換され、それも数年で撤去されました。久留里・上総亀山間も同じ運命になるのでしょうか。そんなことは絶対に許されません。
私たちの財産である久留里線のこれからは、自分たちで決める!を合い言葉に、久留里線存続を実現しましょう。
「鉄道を廃止して、バスモードに転換しても、3年くらいで、バス路線も廃止されました」「鉄道は一度廃止されたなら、二度と戻ってこない」「久留里線をあくまで残そう」と10月19の亀山集会で地もと自治会長さんは訴えました。
以上のように土澤支社長は、鉄道をバス輸送に代えることで利便性を高めると言っていますが、全国どこでもバス路線が運転手不足を理由に次々と廃止されているのが現状です。
私たちは、あくまでも現在の久留里線を存続させ、列車ダイヤを以前に戻すことが、もっとも有効的な利便性向上につながるということをあらためて強調します。JR東日本の鉄道廃線発表に強く抗議すると共に、ただちに撤回することを強く求めます。
以上