ローカル線の赤字 本当に「人口減」が原因か
JR各社は、2010年代後半から「線区別」の利用状況を公開している(JR東海を除く)。「線区」とは、同じ名称の路線でも区間により利用状況に差があるので、いくつかの部分に分けて評価するためだ。 以前はこの種のデータは会社の内部情報と表に出さなかったが、公開されるようになった理由は、「利用の少ない線区」として、赤字ローカル線の廃止に結びつけるためだ。
1987年のJR発足時、各社は全国画一的な経営を改めて地域密着をめざすとアピールしたが、ほとんどのローカル線で利用者の減少が続いた。その原因を「沿線の人口減少」と「少子化の影響」としている。地方ローカル線は高校生の通学利用の占める割合が多いからだ。しかしそれだけが要因だろうか。
人口減より急速に進む利用者減
JR各社では、大都市圏以外では、ダイヤ改正のたびに不便になり「乗ろうにも乗れない状況」が拡大している。
例えば、内房線の君津ー館山間だ。この20年で乗車人員が半減し、列車も新車への置き換えの際に4両から2両に減らされた。さらにワンマン運転だ。ところが沿線人口は1割しか減っていない。10代後半に限ってみても3割減だが、高校生の人口は全体の5〜6%程度であり、大きな差にはならないはずだ。
久留里線の廃線議論でも利用者減少を原因に挙げているが、住民からは「そもそも使いたいタイミングに列車がないのにどうやって乗れというのか」という怒りの声が上がている。むしろローカル線を衰退させ、沿線人口減少を加速させているのだ。
地方民間鉄道では・・
2022年、JR・中小民鉄・第三セクター148区間を分析した富山大の研究報告によると、JRでは輸送密度が低下している区間が多いのに対して、中小民鉄・第三セクターでは増加している区間が多いと指摘している。
例えば、福井県のえちぜん鉄道では、「日常の利用者を大切にする」というコンセプトのもと、駅のトイレの整備、アテンダントの導入(高齢者や子供などの乗り降りの支援)などによって、コロナ以前よりも利用者増加を達成している。
これに対してJRは、ダイヤ改正のたびに減便・減車、特急・快速の廃止、ワンマン化、駅の無人化を繰り返し、駅のトイレや「みどりの窓口」の廃止まで進めている。「在来線にはできるだけ乗らないでくれ」といわんばかりだ。 民営化によって鉄道会社が企業の利益と株主の利益をまず第一に考えて列車を運行する。改めて民営化反対を掲げて闘っていこう。