攻めの廃線」と持続可能な交通網への転換
夕張市の「攻めの廃線」:北海道のJR石勝線夕張支線では、市側からJRへ廃線を提案。維持費に縛られるより、住民の生活に合わせた柔軟なバス網(利便性向上)への転換を選択しました
「攻めの廃線」のシンボルだった夕張市ですが、結果としてバス路線も維持できなくなり、地域の交通網は危機的な状況(崩壊状態)に直面しています。


「攻めの廃線」でバスが倍増され便利になったは本当か? 2015年は今のバスと同等の本数だった夕張支線(鉄道乗蔵) - エキスパート - Yahoo!ニュース
北海道中央バスは、2024年9月末をもって夕張市のレースイリゾートと札幌駅前を結ぶ高速ゆうばり号を廃止する意向であることが明らかとなった。廃止理由は慢性的なドライバー不足に加えて運行経費の高騰などか
夕張市の交通網が直面している極めて厳しい現実は、以下の通りです。
- 札幌など市外を結ぶ「幹線バス」の全廃
鉄道の代替、そしてそれ以上の利便性を目指して設計されたバス網でしたが、市外へ繋がる重要路線が次々と廃止されました。
新札幌路線の廃止(2023年9月):
夕鉄バスが運行していた、夕張市内から江別・栗山を経由して新札幌駅を結ぶ路線が運転手不足を理由に全廃されました。
高速ゆうばり号の廃止(2024年9月):
北海道中央バスが運行していた札幌駅前と夕張を結ぶ高速バスも、利用者の減少と運転手不足で廃止されました。さらに夕張~岩見沢間の路線も同時に廃止されています。
市外結節点の喪失:
これにより、夕張市と市外(札幌圏など)を直接結ぶ定期バス路線は消滅しました。 - 市内路線も「綱渡り」の維持
JR石勝線夕張支線の廃止時に、鉄道の5往復から「10往復」へ倍増させて利便性をアピールした市内路線(新夕張駅~旧夕張駅方面)ですが、こちらも維持が限界を迎えています。
深刻なドライバー不足と高齢化:過半数の運転手が50代以上であり、若手不足が深刻です。
利便性の低下:
2024年4月からの「自動車運転業務の残業規制強化(2024年問題)」に伴い、市内路線の始発・最終便の時刻繰り上げ(運行時間帯の縮小)が行われ、なんとか10往復を死守している極めて脆弱な「綱渡り」の状態です。 - 巨額投資したインフラの形骸化
2020年、夕張市は約10億6,000万円を投じて、地域の拠点・バスターミナル機能を持つ複合施設「りすた」を開業しました。しかし、上記のように主要なバス路線が次々と廃止されたため、現在はバスターミナルとしての機能をほぼ喪失し、閑散としてしまっています。
なぜ「攻めの廃線」は破綻したのか?
最大の要因は、2016~2019年の廃線協議当時にはここまで急激に進むと予測しきれなかった「全国的なバス運転手の致命的な不足(2024年問題)」です。いくらJRから支援金(約7億円の持続化基金など)を引き出しても、「運転する人間がいない」という物理的な壁の前には機能しませんでした。
また、人口減少による利用者のさらなる減少も拍車をかけました。
現在の対応定期バスの全廃を受け、現在は市外へのアクセスとして予約制の「デマンド交通(乗り合いタクシー・ワゴン)」などを走らせて最低限の移動手段を確保する、より縮小した形態への移行を余儀なくされています。
夕張の事例は、今や「地方鉄道をバスに転換すれば安泰」という従来の定説が通用しなくなった、日本の地方公共交通の限界を示す極めて深刻な教訓として全国の自治体に衝撃を与えています。
