8月で被災から3年のJR米坂線

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8月で被災から3年のJR米坂線、復旧の行方なお見えず 地域負担、山形県側との連携…課題多く | 新潟日報デジタルプラス
県議会6月定例会では、2022年の県北豪雨で被災したJR米坂線の復旧問題が議論された。8月で被災から3年。県はJR東日本が示した復旧に向けた4案を「深掘りしている段階」とし、鉄路を復旧するのか、バスに転換するのか方向性はなおも見えな...

県議会6月定例会では、2022年の県北豪雨で被災したJR米坂線の復旧問題が議論された。8月で被災から3年。県はJR東日本が示した復旧に向けた4案を「深掘りしている段階」とし、鉄路を復旧するのか、バスに転換するのか方向性はなおも見えない。県議側は「県が主導して早く方針を示すべきだ」と迫る。復旧方法によっては多額の地域負担が生じる可能性があり、財政にゆとりのない沿線自治体は頭を悩ます中、山形県側とどう足並みをそろえるのかも課題だ。  (報道部・山田啓介)

 「県はどの金額までなら負担に耐えられるのか」。6月25日に開かれた建設公安委員会で、自民党の小野峯生県議(村上市・岩船)は米坂線の復旧や維持費を巡り県を追及した。県は「4案のコスト縮減や利便性向上を検討している」などと答え、明言を避けた。

 4案とはJR東が示した復旧後の運営方法で(1)JR直営(2)鉄道施設を自治体が保有する上下分離方式(3)第三セクターなどによる運営(4)バス転換-からなる。JR東は今年3月までに直営以外の3案について、維持や運営にかかる地域の年間負担額を示した。復旧費は約86億円、工期は約5年と見込む。

▽JR東は沿線の判断を待つ構え、沿線自治体は戸惑い

 焦点は鉄路を復旧するのかどうか、復旧するならどの運営方式を選ぶのかだ。

 県は国に対し、直接間接に鉄路復旧に向けた支援を要望してきた。主な内容は、復旧費の地方負担分に地方債を充てられるように制度変更することや、上下分離や三セクになった場合は運営にかかる補助の拡充や新設といったものだ。

 だが、これらの要望について県は県議会建設公安委員会で「国から明確な返答は得られていない」と答弁。未来にいがたの上杉知之県議(新潟市中央区)は「国を動かして線路を復旧するなら県の覚悟が必要。早急に地域の方向性を出すべきだ」と訴えた。

 JR東は、どのような方法での復旧を目指すのか、沿線自治体の判断を待つ構えだ。だが、自治体の担当者からは戸惑いの声も漏れる。

 関川村の野本誠政策監は「各案の負担目安額が示されたが、JRがどれくらい関与してくれるのかが分からない。これが明らかにならないと住民にも説明できず、もどかしい」と語る。

▽新潟、山形両県はJR直営復旧を希望、JRは難色

 新潟・山形両県にまたがる米坂線の沿線7市町村では財政規模や路線利用者数にもばらつきがある。

 両県はJR直営による鉄路復旧が望ましいという点では一致しているが、JRは直営案に難色を示す。多額の年間負担も想定される上下分離や三セクでの運営は、長期的な視点では最善といえるかは沿線自治体にとって判断が難しい。

 ある関川村議は、村の米坂線利用者は学生が比較的多かったと振り返るが「いまは入学時から代替バスなどで通う学生がほとんど」と指摘。「村の財政も厳しく少子化で学生も減る。多額の負担が生じるなら鉄道を復旧しなくてもいいと考える村民はいる」と明かした。

 今後は沿線をまとめる新潟・山形両県の動向に一層注目が集まる。濵口信彦・県交通政策局長は「費用負担は大きな論点。議論が進められるよう地域に実現可能な方策の提示が必要で、検討している」とする。鈴木達也・山形県総合交通政策課長は「新潟県も鉄道復旧が第一とした上で、何ができるかを考える方針では一致しているはずだ」との認識を示した。

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